| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-091 (Poster presentation)
サケ科魚類サクラマスOncorhynchus masouは極東地域にのみ分布し、北日本地域の重要な水産資源となっている。これまでの研究から本種は母川回帰性を有しており、同一河川内の異なる支流間といった局所スケールにおいても個体群の遺伝的構造を形成していることが知られている。しかし、各支流における個体群サイズはあまり多くないことが知られており、人口学的要因によって、遺伝的構造が変化している可能性が考えられる。そこで本研究では、サクラマス個体群の遺伝的構造の時間的な変動の有無を明らかにすることを目的とした。2007年〜2009年の3年間、北海道中西部に位置する厚田川9支流においてサンプリングを実施し、マイクロサテライトDNA14遺伝子座を用いた集団遺伝学的解析を行った。解析の結果、多くの支流個体群間に遺伝的分化(FST, G”ST)が見出され、それら分化の程度は新魚を用いた先行研究の値より非常に大きいものだった。また、同一支流内においても年度間で遺伝的な差異が認められたこと、IBDやMDSの結果が年度毎に異なっていたことから、サクラマス個体群の遺伝的構造が時間的に変動している可能性が示唆された。