| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-092 (Poster presentation)
キクガシラコウモリとコキクガシラコウモリは両種とも洞窟性で,ねぐらは海蝕洞や山地の洞窟,廃坑などで確認されている.この2種はたびたび同じ洞窟内で確認されている.
埼玉県内ではキクガシラコウモリとコキクガシラコウモリの2種はともに準絶滅危惧種に指定されており,そのねぐらはほとんど明らかになっていない.ねぐらを明らかにすることは,これらのコウモリの生活環境を保持していくためにも重要である.そこで今回,新たに埼玉県秩父郡皆野町で,手掘りの採掘坑跡において両種のコウモリの生息を確認したので報告する.
調査地は,周囲を広葉樹林に囲まれた手掘りの採掘坑跡(以下,坑道)である.この坑道は300-500年前に銅を採掘するために掘られたものとされ,遊歩道沿いに3本存在する(道路に近い坑道から坑道A,B,Cとした).長さは3本ともおよそ 20 - 30 mである.これらの坑道は,標高が 340 - 370 mの低山帯にあり,埼玉県内のキクガシラコウモリとコキクガシラコウモリのねぐらとして比較的低標高地であると考えられる.
調査は4回(2012年5月25日,6月5日,2013年10月8日,11月8日),目視で行い,頭数を数え,種類を同定するために写真撮影を行った.
2012年5月25日:坑道Aにてキクガシラコウモリ2頭,6月5日:坑道Aにてキクガシラコウモリ7頭,2013年10月8日:坑道Bにてキクガシラコウモリ4頭,11月5日:坑道Bにてコキクガシラコウモリ1頭が確認された.
本調査では個体識別ができなかったが,2013年6月5日の調査で,坑道Bと坑道Cの両方で7頭確認され,これらの個体は坑道Aにいた個体が移動したと考えられた.近くに他の坑道が存在することはキクガシラコウモリにとって比較的安全が確保出来ると考えられた.2013年11月5日の調査では,コキクガシラコウモリが観察され,複数種が坑道を利用していることが確認された.