| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-HS08 (Poster presentation)
マダラチョウの仲間のアサギマダラParantica sitaは春と秋に渡りをすることが知られており,全国的な規模で標識調査が行われている.これによって移動状況などがわかってきたが,体重や体温の測定,体温調節などといったことは調べられていなかった.
そこで,筆者らは秋の渡りのルートとして重要視されている四国西南部の愛南町において標識調査を行うとともに,体重や体温などといった基礎研究を行った.それによって調査地での再捕獲や筆者らが標識した個体の再捕獲などがあり,調査地が渡りの中継地として重要であることや,陸上の渡りの速度が約1.2km/hであることがわかった.さらに,体に対する翅の割合や翅の構造を調べた結果,本種は渡りに適したものであると考えられた.また,体重を調べた結果,平均体重が約314mg (n=56,最大638mg,最小166mg)となった.さらに,野外の体温測定では,室内とは異なり各部の平均体温は胸部(24.6℃)・腹部(24.5℃)が最も高く(気温より+3.6℃),前翅(22.9℃)や後翅(23.5℃)も気温(t=21℃)より高いことがわかった.実験では,27℃以上になると翅をばたつかせて体温調節を行っているような行動が観察でき,体温調節は太陽光を浴びるだけでなくはばたくことも関係があると考えた.