| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-HS11 (Poster presentation)
日本産イワナ(S. leucomaenis)は,アメマス,ニッコウイワナ,ヤマトイワナ,ゴギの4亜種に分類される.乱獲により増殖を種苗放流にたよるため,自然集団の遺伝的固有性の撹乱が問題となっており(Kubota et al.,2007),地域集団毎の遺伝的構造の識別と保全の地理的単位設定が急務である(山本ら,2008).イワナはmt-DNAのcyt-b全領域1141bp塩基配列中557bpの比較の結果,多数のハプロタイプと5つのcladeに分類されたが,その地理的分布と4亜種の地理的分布はほとんど一致しないとされる(Yamamoto et al.,2004;佐藤・山本,2010;山本,2011).しかしcyt-b全領域塩基配列も含め,亜種と総体的な遺伝子型の地理的分布の比較は必要であろう.そこで我々は亜種間の遺伝的個有性の有無を確認するための第一歩として,亜種毎のcyt-b全領域1141bpとNADH6の塩基配列を比較し,亜種間の地理的分布との関係を知ることを目的とした.
調査地域は島根県高津川,長野県太平洋側河川,北海道帯広の東部河川海域で,期間は2012年8月から2013年11月である.調査分析の結果cyt-b557bp領域では同一ハプロタイプであっても,全領域で比較した場合異なる遺伝的集団となる場合が存在することが明らかとなった.4亜種の地理的分布と遺伝的地理的分布の比較にはさらなる調査の必要性が示唆された.