| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-HS33 (Poster presentation)
東広島市西条は,日本の三大銘醸地の一つといわれている。しかし近年,急速な都市開発と里山の荒廃が原因で,酒造用水とする井戸水の悪化や水量不足が起こり,酒造りに影響を及ぼすことが懸念されている。そのため,平成13年から水源となる里山の保全活動「山のグランドワーク」が行われるようになった。本研究は,酒蔵井戸水の水質データを継続的に蓄積し,データの比較を行うことで保全活動の成果を検証することを目的としたものである。研究では,8つの酒造会社から提供していただいた醸造用水とする井戸水(地下水)の硬度を継続的に測定し,過去のデータとともに日変化,季節変化,年変化を考察した。測定の結果,井戸ごと及び日によって硬度のばらつきがみられた。井戸ごとの年平均硬度は中硬水5,硬水2,軟水1井戸であり,酒蔵地域一帯がすべて同程度でないことがわかった。経年変化の特徴はみられなかったが,季節変化としてすべての井戸水において秋から冬にかけて硬度が上昇する傾向がみられた。この傾向は,同時期に植物の生長が遅くなることや降水量が減少することに関係しているものと思われる。山のグランドワークによって地下水涵養機能を保持することは,醸造用水の硬度を一定に保つうえで役立っていると考える。また,井戸ごとの硬度の違いは,地下水脈の違いに原因があると思われる。