| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-HS43 (Poster presentation)
山口県萩市笠山は、対馬暖流が流れる日本海沿岸の半島状の地域である。塊状溶岩のすき間から冷気が吹き出す風穴が多数存在し、暖地性植物と寒地性植物が共存している。シダ植物のカサヤマイノデとカタホソイノデは、この特異な気候条件の下、世界で笠山だけに生育するといわれる。私たちはこれらの植物がなぜ、笠山にしか存在しないのか、ということに疑問をもち、両種の起源について調査を行った。
まず、笠山で研究に使用する葉を採集し、DNAを抽出した。葉緑体DNAのrbcL領域をPCR法によって増幅し、塩基配列を解析した後、インターネット上に登録されたイノデ属植物の塩基配列データと比較した。その結果、私たちが採集したカサヤマイノデには、イノデと同じ塩基配列をもつ個体と、ホソイノデと同じ塩基配列をもつ個体の2つのタイプが見られた。シダの葉緑体DNAは一般に母性遺伝するため、この結果はカサヤマイノデが、イノデとホソイノデの雑種であることを示していると考えられる。
今後は、自分たちの手で雑種を作ることに挑戦し、本当にカサヤマイノデやカタホソイノデを作ることが可能か、実験で確かめてみようと考えている。