| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-HS46 (Poster presentation)
キノコのセルロース分解酵素を活用して、廃棄培地からバイオエタノールを生産する基礎的なデータを集める実験を行った。
4種類の有機物(片栗粉、米ぬか、コーンスターチ、砂糖)を使い、培地容積に占める割合が10%、15%、20%、25%となるように培地作成し、ヒラタケを栽培した。栽培中の菌糸の伸長を測定し、子実体が形成された場合は重量と全窒素量、そして栽培後の培地に含まれる硝酸態窒素量を測定した。
結果、片栗粉、米ぬかは、培地に含まれる割合が異なっても菌糸の伸長に影響はなかった。コーンスターチは割合が高くなるほど伸長が速くなった。砂糖では割合が高くなるほど伸長が悪化した。菌糸の密度は、培地の有機物割合が同じならば、米ぬかが最も大きかった。片栗粉と米ぬかの培地だけ子実体が形成された。子実体平均重量が最大になったのは、米ぬか15%の培地で2.31gであった。子実体の全窒素量は、米ぬかの方が高くなった。おがくず単体には硝酸態窒素は含まれないが、栽培後のすべての培地から、有機物に含まれる以上の硝酸態窒素が検出された。硝酸態窒素量が最も多いのは米ぬか培地であった。
以上より、有機物に含まれる窒素量は、菌糸の密度を決定するため、子実体形成に大きな影響を与える。このことから、バイオエタノールとヒラタケの生産両立には、窒素を含む有機物を適切な量で培地に加える必要があることが分かった。また、たとえセルロース分解酵素を遺伝子組換え等によって強化したとしても、生じる糖が多すぎると菌糸の伸長に悪影響を及ぼすことが示唆された。