| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-002 (Poster presentation)
山口県熊毛郡上関町の島と海にみられる特異な生態系について,日本生態学会などはたびたび要望書を提出するなどその保護に取り組んできた.上関の植物と植生について,これまで上関原発計画地のある長島の田ノ浦と,対岸の祝島で調査してきたが,今回その近傍にある無人島,鼻操島(計画地から2.5 km,面積5.1 ha)・天田島(1.1 km,22 ha)・宇和島(6.1 km,17 ha)の植生を調査した.宇和島と天田島ではオオミズナギドリの繁殖が最近発見された.その営巣による植生への影響も併せて報告する.
鼻操島,天田島では,それぞれ2ヶ所に調査区を設定し,毎木測定を行った.出現した上位3種はスダジイ,モチノキ,ハゼノキ(林冠木の直径は25 cmから55 cm)で,常緑樹の相対優占度は75 %以上であった.常緑樹は田ノ浦や祝島と同様にタブノキ型種(服部 1993)であった.さらに,鼻操島では陽地の植物(オケラ,ザイフリボクなど)が多かった.
宇和島では,調査区を巣密度の高い場所に2ヶ所,巣が全くない場所に2ヶ所設置した.巣密度が高い場所では,出現した上位種はヤマザクラ,ヤブニッケイ,ヤブツバキ(林冠木の直径は20 cmから25 cm)で,先駆種のアカメガシワの割合が高く(26.9 %),林床のベニシダやつる性木本は少なかった.巣がない場所では,出現した上位種はヤマザクラ,タブノキ,イヌビワ(林冠木の直径は20 cmから35 cm)で,林床はヤブソテツ,ベニシダ,およびテイカカズラなどのつる性木本が多かった.宇和島におけるオオミズナギドリのコロニーは約70巣で,他の繁殖地と比較するときわめて小さいが,先行研究にみられるように下層植生が貧弱化している.