| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-005 (Poster presentation)

大雪山における高山植物群落構造の40年間の変化

*雨谷教弘,工藤岳(北大院・環境), 佐藤謙(北海学園大・工)

気候変動は高山生態系に直接的な影響と間接的な影響をもたらす。前者は、気温・降水量・積雪環境の変化と、それに伴った土壌水分などの環境変化であり、それに応答して植生変化が進行する。後者は、環境変化に応答した主要構成種が他の植物へ及ぼす影響である(競争的排除など)。本研究では、山岳地域で進行している群落構成種の変化の動向を明らかにすることを目的とした。

大雪山国立公園の高山草原である五色ヶ原と黄金ヶ原では、1971‐72年(佐藤2007)と1988年(工藤未発表)にそれぞれ植生の記載が行われている。五色ヶ原では、航空写真の判読からハイマツとチシマザサの分布が過去30 年間で顕著に拡大していることが分かっている。そこで、五色ヶ原と黄金ヶ原において70年代と80年代の記載が行われていた場所とできる限り同じ場所で調査区を設定し、植生調査を行った。また、調査場所の立地環境(斜面方向と傾斜度)・土壌含水率・植生高・位置情報の記載と写真撮影を行った。得られたデータを70年代と80年代の植生データと比較することで、3時期における群落構造変化を追った。

3時期の植生データを群落タイプ毎に分けたところ、黄金ヶ原では群落タイプの変化が少なかった。一方で、五色ヶ原では、ミヤマキンポウゲやハクサンイチゲなど比較的湿潤環境に発達する雪潤草原に見られる高茎草本種が減少し、ミヤマヌカボなどの禾本類が顕著に増加していた。このことより、五色ヶ原では航空写真のスケールでは判読できない群落構成種の変化が生じていることが示された。


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