| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-010 (Poster presentation)

リョウブの重金属耐性に関係する内生糸状菌と糸状菌内共生細菌の影響

*由井 博 ,山路恵子(筑波大学大学院 生命環境),升屋勇人(森林総研・東北)

高濃度のZnを含む鉱山跡地に自生するリョウブは、内生糸状菌Y株種によってZn耐性を獲得している。Y株種はZnと錯体形成(可溶化)をする物質を産生している可能性があり、またY株種は低pHのクエン酸添加MA培地での継代培養により生理的変異が生じること、DNA抽出やFISH法の結果からこの変異の要因は共生細菌によるものではなく酸性条件下によることが先行研究や本研究の予備実験によって明らかになった。そこで本研究では 1)Y株種の産生するZn可溶化物質と変異による物質産生への影響の解明、2)Zn汚染土壌におけるリョウブ実生に対するY株種通常株とY株種変異株の接種試験、を行い、変異により生じたZn可溶化物質の産生能の差異がリョウブへのZn耐性誘導にどのように影響するか解析した。

不溶性Zn可溶化活性試験によりY株種はZn可溶化物質を産生し、本物質は有機酸であること、また変異株は通常株に比べZn可溶化物質産生能が低下したことから、Y株種は低pHでの継代培養による変異によって可溶化物質の産生が低下したことが明らかになった。高濃度Zn土壌におけるリョウブ実生への接種試験では、変異株接種区では通常株接種区に比べ多くの実生が枯死したことから、Y株種の変異により実生へのZn耐性誘導が消失することが示唆された。

これらの結果から、Y株種はリョウブのZn耐性機構に関与するZn可溶化物質を産生し、酸性条件下ではZn可溶化物質産生能が低下する変異を生じ、リョウブのZn耐性誘導が低下することが明らかになった。実生への接種試験は現在続行中であり、培養完了後、生存実生と枯死実生の含有Zn濃度を測定し各接種区のデータを比較することで、リョウブのZn耐性獲得機構とY株種の変異の関係性は明らかになると考えられる。


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