| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-013 (Poster presentation)
近年,熱帯林内での着生植物の空間分布を調べる際には,林冠部が提供する多様なハビタットを考慮するために林分スケールで空間分布を解析する重要性が指摘されている.本研究では,林分構造を三次元的に測量する手法を用いて,林分スケールで着生植物の分布を明らかにし,着生植物種ごとの空間利用様式を評価することを目的とした.
タイ北部ドイインタノン国立公園内の熱帯山地林(標高1700 m)において2013年9月,10月に調査を実施した.林内に一辺20 mの方形区を設置し,区内の胸高直径が10 cm以上の21個体の樹木についてレーザー距離計を用いて林分内の三次元配置を測量した.調査木を1 mから10 mのセグメントに分割し,各セグメントに出現する目視により同定可能な着生植物種を記録した.
方形区における林分では着生植物の種ごとに異なる垂直分布パターンが見られた.出現頻度が高い種に関して,ラン科Otochilus albusは林分の上層部に,Aeschynanthus lineatusとツルシダ科Oleandra wallichiiは中層部に,チャセンシダ科Asplenium ensiformeは中層部から下層部に分布しており,サトイモ科Remusatia viviparaは下層部から上層部のすべての高さに出現していた.また,林分の中層部に出現する着生植物には,高木のみに偏在する種と樹木サイズにかかわらず出現する種が存在した.これは種によっては低木の樹冠部を構成する細い枝をハビタットとして利用できないことに起因すると考えられる.林分内における着生植物の空間分布には,垂直方向の環境条件の違いだけでなく,ハビタットとなる樹木個体の形態的特徴が影響していることが示唆された.