| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-014 (Poster presentation)

ヤブツバキ落葉分解菌類(リティズマ科)の定着量と子実体生産は温度によって変化するのか?

*松倉君予(筑波大院・生命環境), 山岡裕一(筑波大・生命環境), 広瀬大(日大・薬)

ヤブツバキ葉に生息するリティズマ科菌類は、生葉に内生菌として定着し、落葉後の初期分解において重要な役割を担う。本科菌類はリグニン分解に伴い落葉を漂白化するため、落葉上の漂白部を本科菌類のコロニーとみなすことで、その面積を定着量として測定することができる。著者らはこれまでに、国内のヤブツバキ葉には本科菌類3種{Coccomyces sp. (CS)、Lophodermium jiangnanense (LJ)、Rhytimataceae sp. (RS)}が分布し、各種の定着量及び定着量に基づく種間割合は地域間で異なることを明らかにした。また、本科菌類の定着量と子実体数、それらの経時的変化は、落葉後の環境条件に影響を受けて変化することを示した(第57-59回大会にて発表)。

本研究は、環境条件の指標の一つとして温度に着目し、その差異が各種の落葉上の定着量と子実体数に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。2013年5月、本科菌類の種組成と種間割合が異なる4調査地{千葉県松戸市(種組成:CS)、同県館山市(CS、LJ、RS)、神奈川県大磯市(LJ、CS)、静岡県熱海市(CS、LJ)}で落葉直前のヤブツバキ葉を各調査地80枚ずつ採取した。葉を15・20・25・30℃に設定したインキュベーターで20枚ずつ培養し、4か月後の定着量と子実体数を調査した。その結果、子実体を生産する温度は種間で異なり、CS及びLJは15-25℃、RSは15-20℃であった。30℃では全ての種が子実体を生産しなかった。また、15-25℃の間で本科菌類の定着量及び種間割合に差はみられなかった。これらの結果は、高温度環境は本科菌類の子実体生産を制限するが、温度の差異は本科菌類の定着量及び種間割合に影響を及ぼす主要な要因ではないことを示唆した。


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