| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-015 (Poster presentation)
半自然草原は二次植生であり、利用放棄により遷移は進行し、樹林に移行していくと一般的には考えられているが、亜高山帯に発達する場合の草原の維持機構に関する既存研究はほとんどない。本研究の対象地である霧ヶ峰高原は、採草地利用が中止して約50年が経過しているが、遷移の速度は遅く、現在も概ね草原景観が維持されている。亜高山帯草原の多くは火山地域の平坦な山頂部に成立しており、このような立地環境の特異性が群落の組成や構造に影響を与えている可能性がある。そこで本研究では、本州中部山岳域に成立する霧ヶ峰高原の亜高山帯草原において、地質地形条件に着目して、群落と特異な立地環境との関係を明らかにすることを目的とした。
2013年の調査では、群落と地形条件との対応を把握するため、霧ヶ峰高原の山稜部の中から3か所を選定し、各々の風衝地と風背地において、山稜部斜面の上部から下部にかけて1m×1mの方形区を約10m毎にベルト状に設置した。方形区数は計116個となった。各方形区において植生調査と立地環境調査(土壌水分及び土壌硬度、傾斜角、斜面方位、標高測位)を実施した。
その結果、風衝斜面上部では傾斜角は小さく、乾燥した環境で、ササやヒゲノガリヤスを中心として、乾生な礫地などに生育する植物種が出現した。また、風衝斜面下部にかけては傾斜角が大きく、より湿潤な環境になり、ススキの優占度が大きくなる傾向があった。一方、風背地では傾斜角が大きく、湿潤な環境で、ススキやヨツバヒヨドリなどの高茎草本から構成される群落の成立していることが明らかとなった。今後は、地質や卓越風との関連についても検討していく予定である。
本発表では、新たなデータを加えて解析を行い、群落と地形条件との対応関係についても考察する。