| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-016 (Poster presentation)
樹形(樹高や樹冠の大きさなど)は種や成育する環境によって大きく異なる。樹高成長は光獲得競争における重要な戦略の一つである。一方で、樹高が高いほど風ストレスも大きい。一般に、風当たりの強い尾根部では谷部に比べ、樹高が低い傾向がみられる。このように、樹木は風に対する力学的安全性を確保するために、樹形を可塑的に変化させていると考えられる。本研究では、尾根部から谷部へかけて連続的に風速が減少すると仮定し、それに対応した樹形の可塑的な変化を明らかにすることを目的とした。また、樹形の変化によって力学的安全率(材の強度/風によって幹で発生する応力)はある一定の範囲に保たれていると仮説を立てた。
本研究は、京都府南部に位置する森林総合研究所の山城試験地にて実施した。この試験地では尾根と谷にフラックスタワーが設置されており、風速の鉛直分布が観測されている。尾根から谷へかけて調査地を設定し、総計29種249本の樹冠形状や樹高を調査した。解析の結果、尾根から遠いほど幹直径あたりの樹高が高く、また樹冠面積が大きい傾向がみられた。尾根・谷で共通の風速の鉛直分布を適用した場合、力学的安全率は尾根から遠いほど低下する(力学的に不安定)傾向がみられた。実際には風速は尾根よりも谷で遅いと考えられるため、谷では弱い風速に順応して樹高や樹冠面積を増加させたと考えられた。一方で、高木と低木を比較すると、種間・種内ともに樹高の増加に伴って力学的安全率は低下する傾向がみられた。この主たる理由は、高木は低木よりも強い風を受けるからである。ただし、尾根・谷の比較のように、風が弱いところでスリム(幹直径あたりの樹高が高い)になるような変化は、高木・低木の比較では見られなかった。