| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-017 (Poster presentation)
ツボカビは湖沼によく出現する真菌類であり、様々な植物プランクトン種に寄生する。しかし、光学顕微鏡下での種同定は不可能であり、単離培養も容易ではない。そこで本研究は、ツボカビ胞子体(直径数µm)1個が付着した珪藻1コロニーからツボカビの核18SrDNA遺伝子断片のみを解析する手法を開発した。
この方法を琵琶湖と印旛沼で採集したAulacoseila ambigua、Aulacoseila granulata、Synedra sp.、Fragilaria sp.の珪藻4種のコロニーや細胞に適用したところ、ツボカビ目Rhizophidiumクレード(R)、2つの未記載の真菌類の系統(F1,F2)、 真菌類で最も祖先的な系統であり生態がよく分かっていないクリプトマイコータ(CM)、および酵母Debaryomyces hansenii(DH)の塩基配列が得られた。琵琶湖ではA. granulataからF1、CM、DH、Fragilaria sp.からF1が確認された。印旛沼ではA. ambiguaからF1とCM、A. granulataからF2、Synedra sp.からF1とRが確認された。F1は調べた全ての珪藻種から確認された。琵琶湖のFragilaria sp.に付着していたF1の形態は球形であったのに対し、その他のものは楕円形であった。F1の付着したSynedra sp.とA. granulataの細胞質は消失していたため、F1に寄生されていたと思われる。ツボカビを含む真菌類の単一の系統が複数の珪藻種に付着または寄生することと、複数の真菌類の系統が単一の珪藻種に付着することから、淡水性真菌類と珪藻種の相互関係は入れ子構造をなしているかもしれない。