| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-022 (Poster presentation)

北海道天然生林における台風撹乱が引き起こした森林構造の変化に対する残存木の応答

*佐藤剛(北大・環境科学),吉田俊也(北大・研究林)

台風など強風による撹乱は、森林構造を大きく変化させ、多くの生態系内プロセスに影響を及ぼす。林冠ギャップの形成が成長や更新を促す一方で、周辺の個体の枯死率を増加させる現象も広く報告されている。後者は、林分構造の変化に伴う微気象要因の変化などに起因すると考えられ、影響は時空間的により広い範囲に波及することが予測される。本研究では2004年9月に発生した台風撹乱発生から8年間にわたる残存木の枯死パターンを明らかにすることを目的とした。

北海道大学雨龍研究林内の天然生針広混交林で調査を行なった。3haの調査プロットにおいて、2002-2012の期間、立木の胸高直径及び位置を計測した。枯死木はその形態(根返り・折れ・立ち枯れ)を記録した。また、林分内の優占種で、風倒の比率も高かったトドマツを対象に、生立木も含めて年輪コアを採取し、枯死年の特定や成長量の変化を調べた。

2004年の台風時には胸高断面積合計で12%の立木が枯死したが、その後、2012年までに新たに供給された枯死量も、撹乱時に匹敵していた。撹乱時の枯死とその後の枯死の空間的な関係性は同所的であり、枯死が空間的に広がっていく傾向が示唆された。また、撹乱1-2年後のトドマツの枯死は、周辺の枯死木量と生の相関が見られたのに対して、3-8年後では成長量が低下した個体に多い傾向があった。以上のように、強風撹乱は、その直後にギャップ近接個体の物理的なダメージ、その後はより広い範囲での生理的・生物的ストレスの増加により、長期にわたって森林の動態に影響を及ぼすことが明らかになった。


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