| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-086 (Poster presentation)
北半球の高山生態系で、マルハナバチは多くの高山植物にとって重要な送粉昆虫である。また、真社会性のマルハナバチの活性は、高山植物の生育シーズンが進行するにつれて大きく変動し、訪花頻度の季節性が明瞭である。一方、高山植物の開花時期は雪解けの時期に依存するため、年によって変動が大きい。そのため、年によっては開花時期と訪花パターンのミスマッチが起こり、結実率の年変動が大きいことが報告されている。ハエ類とハナアブ類もまた、高山生態系において重要な送粉昆虫である。しかし、それらの訪花頻度に季節的傾向があるかどうかは、明らかとなっていない。そこで、ハエ類の訪花パターンと送粉の有効性が、マルハナバチ類と比較してどう異なっているかを定量化することを目的とした。
本研究では、2013年に大雪山のヒサゴ沼の調査地において、雪解け傾度に沿ったプロットを6つ設定し、各プロットの高山植物の開花フェノロジー、開花量、結果率、訪花昆虫の訪花頻度の調査を行った。高山植物はそれぞれマルハナバチ媒、ハエ媒、ハチ+ハエ媒に分類した。
各媒花植物の開花量の季節変動は、それに対応する送粉昆虫の季節活性と対応していた。また、各ポリネーターの訪花頻度と結果率は、季節の進行に従って増加する傾向が確認された。ハエ類の訪花活性は、シーズン後半で大きくなり、ハエ媒植物の開花量とは負の相関がみられた。これは、ハエ類が大発生した8月中旬に、雪田環境に生育するハエ媒植物の開花量が、雪解けの遅れにより一時的に減少したためである。ハチ類の訪花活性もまたシーズン後半で大きくなったが、ハチ媒植物の開花量との関連性はみられなかった。開花量と送粉昆虫の季節的対応関係は、各年における雪解けの進行パターンに強く依存することが示された。