| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-089 (Poster presentation)

小規模スケールを用いたチョウ類群集および吸蜜様式に関する水田地域の景観要素との関係性

*不破崇公(信大院・農),大窪久美子(信大・農),大石善隆(信大・農)

近年,里地里山の生物多様性の減少が叫ばれており,生物多様性国家戦略でも要因の解明が課題とされている。本研究では,異なる二つのスケールを用いてチョウ類群集に重要となる環境を解明し,保全策を検討することを目的とした。そのためにチョウ類成虫の分布に影響するとされる吸蜜植物利用様式に着目し,地域を構成する景観要素との関係性の解明を行なった。

調査は長野県上伊那地方の立地環境条件の異なる6地区の水田地域を選定した。地域スケールでは各地区の景観の構造を反映させた直径500m円内を対象として,トランセクト法を用い約2kmのルートで実施した。小規模スケールは本トランセクト法のルート上に25mピッチで設定した。調査は2012年5月中旬~10月中旬に実施した。また小規模スケールは2013年7月~10月に地区を代表する景観要素ごとに定点観測地点を8~9地点設定し実施した。各調査では,出現したチョウ類の種数および個体数,吸蜜行動(チョウ類の種名および個体数,植物種名)を記録した。地域や定点を構成する主な景観要素は,画像処理により算出した。解析にはTWINSPAN解析を用いた。

その結果,チョウ類にとって重要となる環境は,地域スケールにおいて地域を構成する森林の面積により種数が増加することが示された。小規模スケールでは,水田から法面,林縁へと移行する森林で種多様性が高く,吸蜜植物利用様式における在来種種間関係で質的に優れていることが示された。また休耕地ではチョウ類の利用頻度が高く,質は劣るものの量的関係が得られた。そのため,水田から林縁へと移行する森林景観と,かつて里山にみられた草地景観を代替する休耕地の整備を行うことにより,地域のチョウ類に重要となる環境を維持し保全できることが示唆された。


日本生態学会