| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-090 (Poster presentation)
一般的な種子散布様式である動物散布には、散布する動物の特性(果実の好み、行動範囲など)と果実の形質(栄養成分、色など)の両方が影響する。これが選択圧となって植物は多様な色、大きさ、栄養成分などの特徴を持つ果実を進化させてきた。植物の葉や花の香りは、他の生物種間関係において重要な役割を持つことが明らかになっているため、果実の香りも、種子散布者との共進化の結果である可能性が高い。しかし、これまで種子散布の研究において、香りという形質に注目した研究はほとんど行われていない。そこで、本研究では、果実には成熟時特有の香りがあり、種子散布者にとって果実の香りが果実の餌としての価値を示すシグナルになりえるかを明らかにすることを目的とする。
茨城県北茨城市の小川群落保護林とその周辺において、結実している動物散布の植物を対象に果実•葉の採集・捕集を行い、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)によってその香り成分を分析した。同定は同定方法標準物質と法時間とマススペクトルの照合及び、データベースとの照合によって行った。サンプル間の香りの非類似度(Bray-Curtis非類似度)を求め主座標分析(PCoA)を行った。
果実は青い未成熟のうちから葉の匂いの成分とは異なる果実に特異的な香りを放っており、その成分は成熟段階に依存して変化していた。また、各植物の果実の香り成分の構成比や量(香りの質と量)が同科、同属の種間であっても異なっていた。つまり、果実の香りは種や成熟度により特異的な香り組成をもつため、種子散布者に果実の質(成熟度、種類)を示すシグナルになる可能性が考えられる。