| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-091 (Poster presentation)
虫媒花植物と訪花昆虫は一般に、複数対複数の関係で結ばれ、送粉ネットワークを形成する。短期間に特定の時期を取り上げて訪花昆虫の調査を行うことで、その土地の送粉ネットワーク構造を把握する研究がこれまでされてきた。対して、送粉ネットワークは季節を通して、構成する生物種が変化することが知られており、季節をいくつかに区分して送粉ネットワークの構造を示すことで、より詳細にその土地の送粉ネットワークの構造を把握することができると期待される。しかしながら、海浜のように種数や個体数が少なく、単純な生態系においても送粉ネットワークの構造の季節変化がみられるのかどうかを研究した事例は少ない。そこで本研究では、海浜生態系における送粉ネットワークの季節変化を明らかにした。
秋田市雄物川河口の海浜で、2013年の5月下旬‐10月中旬に計19日間、6種の虫媒花草本の開花を観察し、61種513個体の昆虫が訪花した。また、植物と昆虫の相互作用は91観察された。得られたデータを5‐6月、7‐8月、9‐10月の3シーズンに分けて、送粉ネットワークの季節変化を解析した。各シーズンには3‐4種の植物種が開花し、昆虫種が利用可能な植物種数にシーズン間で大きな差は認められなかった。一方で、季節の進行に伴って植物と昆虫の相互作用や、植物種が利用可能な昆虫種数は減少し、送粉ネットワークが単純化している可能性があった。昆虫種の利用可能な植物種数は大きな変化はなかったことから、植物側のみが季節変化の影響を受けていると推察された。