| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-092 (Poster presentation)
富士山の噴火跡地では、カラマツ先駆林からシラビソの極相林へと森林が遷移する。しかし、スラッシュ雪崩が時折、森林を破壊し、再び火山性砂礫地からの遷移が繰り返されることとなる。そのため森林がモザイク状に分布している。
本研究では1932年のスラッシュ雪崩によって裸地化し、カラマツが侵入・定着したカラマツ林、雪崩による破壊が80年以上みられないシラビソ林、そして、老齢木が枯れ、ギャップが形成されたギャップ内、このような異なる環境に生育するシラビソ稚樹の生育パターンと、剥皮状況について調査を行った。
カラマツ林の林床は明るく、シラビソ稚樹は地際まで生きた側枝をつけていた。被害としては剥皮部位より上の主軸が枯損している状態が多かったが、剥皮部位より下にある側枝が生きており、側枝の先端が立ち上がって主軸となろうと変化し始めているものや、枯れた部位から不定芽が出て新たな主軸が再生しているものがみられた。
シラビソ林の林床は暗く、シラビソ稚樹は成長が抑制されていた。剥皮された稚樹はほとんど存在しないため、シカは栄養状態の良い稚樹を選択的に剥皮している可能性がある。
ギャップ内ではシラビソ稚樹が多数存在し、競争が起こっていた。シカは競争に勝ち、成長がよい稚樹を好んで剥皮していた。ギャップ内のシラビソ稚樹は競争によって下枝が枯れ上がっており、剥皮部位から下に生きた枝がない場合が多く、枯死した稚樹が多かった。しかし枯れた稚樹の陰で被陰されていたシラビソ稚樹の光条件が改善され、後継樹に成長することが可能となるかもしれない。
カラマツ林とシラビソ林ギャップ内では被害があるものの、決定的な影響を受けていないが被害が増大すれば、剥皮によって遷移・更新が阻害させる可能性がある。