| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-096 (Poster presentation)
湖岸移行帯には、様々な構造を持つ水生植物が生育しており、陸域と水域の動物に生息場所を提供している。水生植物の繁茂や枯死に伴う構造の変化は、移行帯における動物の生息地利用や生態系間の移動に影響するだろう。そこで本研究は、水域側に浮葉植物、陸域側に抽水植物が生育する湖岸移行帯において、生物の季節動態を明らかにすることを目的とした。
調査は2013年6月から2014年1月に、千葉県西印旛沼で行った。ヨシ・マコモからなる抽水植物帯からヒシ・オニビシからなる浮葉植物帯にかけて、ピットフォールトラップを設置し、水上および地上を移動する動物を採集した。ヒシ食者であるジュンサイハムシは、ヒシの葉が水面を覆う6~9月にかけて浮葉植物帯で採集されたが、7月には抽水植物の葉鞘や葉の隙間でも多く見られた。ヒシの枯死した11月以降は抽水植物帯で見られた。また、主に水田や湿地で生活するコモリグモ科が多く採集され、種によって挙動は異なった。キクヅキコモリグモは6~9月にかけて浮葉植物帯で採集され、ヒシの枯死後は主に抽水植物帯で採集された。一方、キバラコモリグモは、6月には抽水植物帯で多く採集されたが、7~11月にかけて境界部または浮葉植物帯で採集された。クモによる水面のアメンボやヒシ葉上のヨコバイの捕食を観察できたことからも、クモが採餌のために浮葉植物帯へ進出している可能性が考えられる。
したがって、浮葉植物ヒシは、ハムシのようなヒシ食者だけでなく、主に湿地で生活するクモなどにも生息地として利用されていることが示された。また、ヨシやマコモからなる抽水植物帯は、葉を餌として利用する動物だけでなく、浮葉植物の枯死後にはハムシ・クモの両者に越冬場所として利用されていることが示唆された。