| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-100 (Poster presentation)

水生植物の植生構造の違いがトンボ類の種の生息地場所選択に与える影響

岡本真実(千葉大・園芸)

水生植物の群落構造の違いによるトンボ類の棲み分けを明らかにするため,抽水植物群落区,浮葉植物群落区,開放水面区の3タイプの岸辺に,2m×5mの調査区をそれぞれ2カ所ずつ設定して調査を行った.調査区で3分間定点観察を行い,侵入してきたトンボ類の種類と個体数を記録した.

岸辺の植物群落構造の違いによってトンボ類の種類が異なり,種数と個体数に差が出た.抽水植物群落の水辺では合計11種,130個体と,種数,個体数ともに3タイプの調査区で最も多かった.浮葉植物群落区では6種,67個体が確認され,オオイトトンボとアジアイトトンボが個体数の大半を占めた.開放水面区では4種,41個体が確認され,大型のトンボ類であるオオヤマトンボとウチワヤンマの2種のみで個体数のほとんどを占めていた.開放水面区が大型のトンボ類,抽水植物群落区は主に中型のトンボ類,浮葉植物群落区は主に小型のイトトンボ類が利用していることから,植物群落の構造とトンボ類の体長が関係していることが示唆された.

植物群落とトンボ類の体長との関係は生活様式の違いと捕食からの回避によるものと考えられる.すなわち,大型のトンボは開けた水辺で一定の範囲をパトロール飛行しており,植物は飛行の遮蔽となったり,メスの発見を遅らせる可能性があるため,開放水面を主に利用していると考えられる.抽水植物群落では種数,個体数ともに最も多かったが,植物組織の中に産卵を行うギンヤンマやイトトンボ類の産卵が可能であることや外敵から身を隠せる空間が多いこと,抽水植物が止まり木となることが要因として考えられる.浮葉植物群落区では葉が重なっている隙間からイトトンボが出てくるのが確認できることから,より大型のトンボによる捕食から回避するために小型のトンボだけが隠れることができる場所として利用されていると考えられる.


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