| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-101 (Poster presentation)
複数の植物種が同所的に生育する状況では、ポリネーターを介した植物種間の相互作用が存在する。例えば、1)ポリネーターの獲得を巡って競合するかもしれないし、2)共同でポリネーターを誘引しているかもしれない。3)異種間送粉に伴う繁殖干渉も予想される。本研究ではこの3つの視点から、送粉系における植物種間相互作用の査定を行った。
調査は、富山県立山の高山帯で、2012-13年に行った。まず、登山道(総長4.65km)を50m間隔で区切り、区間ごとに、観察したマルハナバチの種とカースト、訪花植物種及びマルハナバチがよく来る植物種の開花数を記録した。また、マルハナバチを個体追跡し、異なる植物種間の飛行がどの程度起きているのか記録した。さらに、マルハナバチがよく来る植物15種の柱頭を採取し、付着花粉の同定を行った。
その結果、花当たりの訪花頻度は、同所的に開花する他種植物の存在によって増加し、同種植物の存在によって減少する傾向にあった。一方、多くの植物種において、訪花したマルハナバチが次に異種へ飛行してしまう割合は非常に低かった(0.0-3.8%)が、柱頭に付着している異種花粉の割合は高かった(14.3-51.4%)。
以上の結果は、ポリネーターの獲得に関して、異種植物は正の影響を、同種植物は負の影響を持つことを意味している。一方、異種植物間飛行の割合が低いにも関わらず、柱頭に多くの異種花粉が付着していた事は、異種間送粉による植物種間の繁殖干渉の存在を示すと同時に、訪花ごとの花粉の持越し率が大きいことを意味している。この事実は、植物種間の繁殖干渉が、ポリネーターの獲得をめぐる相互作用に比べ、広い空間スケールで作用している可能性を示唆している。