| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-103 (Poster presentation)
食害後の植物の再成長は植物一般に見られ、質の良い新葉を多く生産することで、植食者間の間接相互作用を媒介する重要なメカニズムである。このような間接相互作用は種間だけでなく、同種の異なる世代間でも起こる。しかし、次世代の出現の前に他種の食害があった場合、同種の世代間の食害の効果がどのように変化するのかはほとんどわかっていない。この課題に答えることは、植食者間相互作用の強さを変える要因を明らかにする上で重要である。そこで本研究では、ウマノスズクサを寄主植物とするホソオチョウとジャコウアゲハを用いて、食害の回数と順序を操作する実験を行い、1. 両種幼虫の食害が再成長後の地上部量(葉と茎の乾燥重量の合計)と葉齢(新葉および旧葉)ごとの量に与える影響、2. 食害および葉齢が幼虫の消費率と成長率に与える影響を調べた。
1回のみの食害では、ホソオ幼虫の食害は再成長後の地上部量に影響を与えなかったが、ジャコウ幼虫の食害を受けた株の地上部量は減少傾向にあった。ホソオ食害株が次にジャコウの食害を受けると、地上部量を減少させたが、ジャコウ食害株の地上部量は次に両種の食害を受けても変化しなかった。これは、2回目の食害の効果が1回目に食害を与えた種によって異なることを示している。さらに、再成長後の新葉量には食害の回数や順序によって差が見られず、地上部の量は食べ残された旧葉量によって80%説明できた。両種幼虫を用いたバイオアッセイの結果、食害の回数や順序に関わらず、両種幼虫とも新葉を摂食した方が旧葉に比べて消費量あたりの成長率が高くなった。これらの結果は、ホソオ世代間の相互作用はジャコウ食害によって大きく影響を受けるが、ジャコウ世代間の相互作用にはホソオ食害は影響しないことを示唆している。