| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-104 (Poster presentation)
日本最大級の砂丘である鳥取砂丘では、1950年代から行われた防風林の植林の影響を受けて外部から植物が侵入し、砂丘の草原化・森林化が進んでいる。近年ではほ乳類の足跡や糞等の痕跡が多く見られ、動物の目撃情報も得られている。しかし、今まで鳥取砂丘に生息するほ乳類全般を対象とした研究はほとんどなく、植物の侵入とほ乳類の空間的利用の関係は未解明である。本研究では、ほ乳類の砂丘における空間的利用を把握し、植被率との関係を明らかにすることを目的にした。
2012年4月から2013年9月にかけて、除草が行われていない砂丘西部において、4-5週間毎に植生調査を行った。調査地全体にほぼ均等に60個の植生プロットを設置して地上植生画像を撮影した。画像から植生指標Green Excess Indexを用いて砂と植生を判別し、各プロットにおける植被率を計算した。その結果、調査地ではほぼ全域にわたって植物が生育していたが、季節により植被率は変化していた。
植生調査と同時に、植生プロットを繋ぐ総延長約6.3kmのルート上でほ乳類の痕跡の画像と位置を記録した。痕跡を6種類に分類し、種類毎の分布から痕跡の空間的な集中度と関連度を定量的に評価した。その結果、ほとんどの痕跡は集中的に分布しており、同じ種類の痕跡の分布は異なる月において空間的に関連していた。また、同じ時期には、異なる種類の痕跡にも空間的に正の関連が見られた。
さらに、痕跡の有無と植被率の関係について、植被率を対象に植生プロットを中心とした半径10mの円内の痕跡の有無によるMann-Whitney U 検定を行った結果、有意な差は見られなかった。これらの結果から、ほ乳類は選択的・持続的に砂丘を利用しているが、その空間利用は植被率の影響を直接受けていないことが示唆された。