| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-111 (Poster presentation)
種子散布は多くの植物にとって分布拡大のための重要な手段であり、散布者と植物の生育地環境には密接な関係がある。海岸植物のクサトベラScaevola taccada には、異なる種子散布能力をもつ二型が集団内で存在する。一方は果実がコルクと果肉をもつ個体(C型)、もう一方は果肉のみをもつ個体(NC型)であり、その果実型は個体によって一定する。コルクは水に浮き、果肉は鳥が食べるため、C型果実は海流と鳥、NC型果実は鳥に散布されると考えられる。
これまでの研究で、分子系統解析から二型は種内変異であると推測されている(栄村ら 未発表)。また、C型果実は海水に長期間浮くのに対して、NC型果実は直ちに沈むこと、さらに砂浜ではC型、海崖ではNC型の出現頻度が高いことがわかっている(栄村ら 投稿中)。この原因として、砂浜では鳥よりも海流に種子が運ばれるため、海流散布能力に優れたC型の方が適応的であるのに対して、崖では海流よりも鳥が主要な散布者であり、NC型が適応的と考えられる。二型の果実について、どちらもヒヨドリなどによる採食が観察されているが、鳥散布能力の違いは明らかではない。
そこで、本研究では南西諸島と小笠原諸島の計6島で採集したC型1207個とNC型629個の果実を対象に、潜在的な鳥散布能力の違いを評価した。鳥に好まれる果実の一般的な特徴として、果実と種子サイズが小さいこと、栄養価の高いことが挙げられる。本種の果実と種子サイズと果肉糖度について、果実型間と生息地環境間(海崖、岩場、砂浜)で比較した。その結果、果実型間ではNC型がC型よりも未消化果実サイズが小さく、果肉糖度が高くなった。生息地環境間では海崖が砂浜よりも果実のサイズが小さくなった。このことから、海崖のNC型は潜在的に優れた鳥散布能力を持つと推測された。