| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-112 (Poster presentation)
植食性昆虫の餌選好性を決める要因として植物の栄養価と防御機構が考えられる。火山遷移初期では生態系が貧窒素であるため窒素を多く獲得できる植物は成長に有利である一方、生態化学量論的観点から植食性昆虫に選好される可能性がある。本研究の調査地である三宅島は2000年に大噴火し、噴火被害地ではハチジョウススキ、オオバヤシャブシ、ハチジョウイタドリが優占し、植食性昆虫イズアオドウガネの大量発生が報告されている。本研究では、イズアオドウガネの遷移初期植物に対する食害程度とその嗜好性を明らかにすることを目的とした。
調査は2012・13年7月に行った。10のルートを設定し、対象種の植被率、食害率を調べ、対象植物種別にイズアオドウガネのカウントを行った。2013年調査で植物の総フェノール量(TP)・縮合タンニン量(CT)を測定した。
葉の窒素量はオオバヤシャブシ、ハチジョウイタドリ、ハチジョウススキの順に高い濃度を示した一方、イズアオドウガネ個体数・食害程度・餌嗜好性は、両年を通してハチジョウイタドリ、オオバヤシャブシ、ハチジョウススキの順に高かった。また、植物のTP・CTはハチジョウススキよりオオバヤシャブシ・ハチジョウイタドリに多く含まれていた。イズアオドウガネは葉中窒素濃度が高いオオバヤシャブシ・ハチジョウイタドリを主な餌資源としていると考えられるが、葉中窒素濃度がより高いオオバヤシャブシよりハチジョウイタドリを選好しており、両種とも防御物質量はハチジョウススキより多かった。防御物質量より、窒素量が食害パターンを決定する要因であると考えられる。