| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-117 (Poster presentation)

オオヤマザクラは長枝の葉を優先して防衛するか

*中町祥平,今村彰生(北教大旭川)

サクラは花外蜜腺によりアリを誘引し、植食者を排除させる生物的防御を行なうが、発育枝である長枝と光合成の効率を上げる短枝とでは、生育にとって重要な長枝の葉の防衛を優先する可能性がある。

本研究は、オオヤマザクラが長枝の葉を優先して防衛するかを明らかにすることを目的とし、長枝と短枝の葉1枚あたり花外蜜腺数、花外蜜腺面積、花外蜜量、糖重量、被食処理後の花外蜜量と糖重量の変化を比較した。また花外蜜量とアリの花外蜜腺訪問数の経時変化を検討した。

その結果、長枝/短枝の葉140枚における葉1枚あたり平均花外蜜腺数と平均花外蜜腺面積は長枝が2.2個、10.5mm2、短枝が1.3個、2.3mm2であった。6日間調査した処理無/処理有の葉34枚における葉1枚の1日あたり平均花外蜜量と平均糖重量は、処理無の長枝が0.002μl、0.912μg、処理無の短枝が0.001μl、0.022μg、処理有の長枝が0.015μl、2.306 μg、処理有の短枝が0.003μl、0.404μgであった。葉1枚あたり花外蜜腺の個数と面積、花外蜜量については、長枝と短枝の間で有意差が見られた。長枝の花外蜜量と糖重量および短枝の花外蜜量については、処理無と処理有の間で有意差が見られた。一方、葉1枚あたり糖重量については、長枝と短枝の間で有意差がなかった。糖重量については、処理無の短枝と処理有の短枝の間で有意差がなかった。花外蜜分泌とアリの花外蜜腺訪問の時間帯には、順位相関係数に有意な負の相関が見られ、花外蜜はアリが花外蜜腺に訪問しない夜間に分泌されていた。

以上から、長枝では花外蜜腺の個数と面積、花外蜜量を増大させアリを多く誘引する可能性が示された。また被食後は花外蜜分泌を促進し、特に長枝では花外蜜量だけでなく糖重量も増加することから、オオヤマザクラは長枝の葉を優先して防衛することが示された。


日本生態学会