| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-119 (Poster presentation)

アポイ岳におけるエゾシカ(Cervus nippon yesoensis)による植生への影響

*井坂美保子(酪農学園大院・狩猟管理学),田中正人,加藤聡美(アポイ岳ビジターセンター),伊吾田宏正(酪農学園大院 狩猟管理学)

現在増えすぎたニホンジカ(以下シカ)による植物の個体数の減少や地域個体群の絶滅が危惧されている.又,シカが冬期に食料として利用しているササ類への採食圧も大きい.アポイ岳は低標高にも関わらず植生は固有種などが多く保全の必要があるが,シカの高密度地域である日高地方に位置しており,シカによる植生への悪影響が危惧されている.そこで本研究では植生調査及びエゾミヤコザサ(以下 ササ)の密度調査を実施した.又,シカの個体群相対を把握する為に様似町広域でライトセンサス調査,アポイ岳での越冬地調査を実施した.

2012年,2013年の春と秋にそれぞれ2日間ずつライトセンサスによって群カウントを実施した.越冬地調査は登山道を踏査し,足跡と合目毎の積雪深を記録した.植生調査は登山道沿いのシカ道を選定し2011年春に1m×1mの柵外区を設置した.又,2011年秋,2012年春に柵外区の隣接地に1m×1mの柵内区を設置した.柵内外で出現した植物の被度,高さを記録した.同じ方形区でササの本数を新旧別に記録した.

ライトセンサスでは高密度地域,又は高密度に近い中密度と評価された.又,環境タイプ別では春,秋ともに牧草地で多く確認され,牧草がシカを誘引していると示唆された.越冬地調査でシカはアポイ岳の低標高区域(380m以下)を頻繁に利用している事が確認された.それより上部は針葉樹が十分生育しないため積雪深に関らず利用が困難であると考えられる.植生調査では,柵内外での相対優先度の違いが見られなかった事から,2年間では下層植生は回復しないと示唆される.他方,柵内外でのササの密度に有意差は無かったものの小型で地上部の寿命が短い傾向があった事から,一定の採食圧を受けていると考えられる.


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