| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-121 (Poster presentation)
動物媒植物における花形質の種間多様性の多くは送粉者との相互作用の過程で進化したと考えられている.しかし,花形質の種内多様性と送粉者からの選択圧の地域変異を関連づけた研究例は少ない.本研究では,山地帯から高山帯にかけての送粉共生系に着目し,マルハナバチ相の地域変異を明らかにし,それにともなうウツボグサ花筒長の種内変異の有無を発見することを目的とした.
山岳地域の重要な送粉者であるマルハナバチ類の垂直分布を調べるため,2012年6月〜9月に乗鞍・上高地の標高700m〜2600mで分布調査を行った.まず,似た口吻長をもつハチ種同士は分布標高を違える結果が得られた.また,高標高では口吻長が中程度のマルハナバチ種が不在であり,小型のヒメマルハナバチが優占することが明らかになった.マルハナバチ類の群集構造は標高に沿って変化し,特に標高の高い地域ではマルハナバチの最大型種と最小型種による極端な選択圧をマルハナバチ媒植物が受けていることが示唆された.
花形質の地域変異を明らかにするため,2013年7月〜9月に広い標高域に分布するウツボグサの花サイズと送粉者相を長野県内の4山域23地点でしらべた.その結果,高標高ほど花筒長が小型化する傾向が見られ(r=-0.21, P<0.001),高標高で小型マルハナバチ種が優占する結果と合致した.しかし各地点のマルハナバチ類の平均口器長とウツボグサの花筒長には有意な相関が認められなかった(r=0.06, NS).他年次での調査では有意な相関が得られていることおよび,多年時では小型マルハナバチ類が優占していた複数の地点で,2013年度には大型マルハナバチ種が多く見られたことから,送粉者相の年次変動が花サイズとハチサイズが不一致であった理由の一つと考えられる.