| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-043 (Poster presentation)

対馬に侵入したツマアカスズメバチの分布および生態について

高橋純一*,高橋稜一,岩口健太郎,里見優,原田レオナ(京産大・総合生命),荒木静也(対馬市役所),境良朗(対馬市),山村辰美(ツシマヤマネコを守る会),佐護哲也(KTN)

長崎県対馬市(対馬島)において,2012年に日本では未記録であったスズメバチの働き蜂を発見・捕獲した.外部形態を比較したところ,ツマアカスズメバチVespa velutinaであることがわかった.本種は,西はアフガニスタン,北は中国,南はインドネシア,東は台湾まで自然分布をしているが,近年は韓国,フランス,ポルトガル,スペイン,ベトナムで本種の中国産亜種が,侵入外来種として帰化し,刺傷被害や生態系への影響が問題となっている.しかしながら,その後の帰化状況に関する情報は不足している.そこで今回われわれは,2013年9月から12月に対馬島内におけるニホンミツバチの養蜂場を中心にツマアカスズメバチの来訪個体を観察・捕獲し,それぞれの地域における分布状況,侵入経路の特定,および生態的な調査を行った.北部地域では,すでに全域に分布が確認され,40巣以上の営巣が確認された.南部地域では,1巣のみ営巣が観察された.採集した巣の調査により島内で繁殖・帰化していることが示唆された.分布状況の結果から,侵入の初期状態であることが明らかになった.さらに本種の自然分布地域と対馬を含む帰化地域で捕獲された個体のミトコンドリアDNAの部分配列を解析したところ,対馬個体群は,韓国・中国で見つかっているハプロタイプと一致したことから,韓国経由で侵入した可能性が高いことが示唆された.また,本種の分布密度が高い地域では,在来種スズメバチの減少も確認されたため,このまま侵入状態が続けば,本種が優占種となる可能性が高いと予測された.


日本生態学会