| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-045 (Poster presentation)
ソウシチョウは中国大陸原産のチメドリ科の鳥類であり、日本には江戸時代から飼い鳥として輸入されてきたが、1980年代以降、関東地方から九州までの各地で野生化して、特定外来生物に指定されている。ソウシチョウが高密度で生息する場所では、鳥類の在来種の一部が捕食者を通じた間接効果によって密度が低下することが知られているが、国内にソウシチョウが侵入・定着してすでに30年余りが経過しており、長期的に鳥類群集がどのように変化しているか、明らかにされていない。そこで、比較的早い時期にソウシチョウが侵入した九州山地において、1990年代と2010年以降との鳥類群集を比較し、群集構成の変化とソウシチョウの密度について検討した。
調査地を九州中央山地の熊本県雁俣山と国見岳、および阿蘇北外輪山の菊池渓谷の三箇所に設定して、ソウシチョウの生息密度の変化をみるとともに、在来種のうち、ソウシチョウの影響を受けると考えられる低木層利用種について、密度の変化の有無を検討した。雁俣山においては、1990年代と2010年代とでソウシチョウ、在来種とも密度の変化はみられず、影響は顕著ではなかった。国見岳では1990年代に比べてソウシチョウの密度は2010年代には低下していたが、同時に在来種のウグイス、コマドリも低下していた。これはこの間にシカの密度が増加し、下層植生が衰退したことによるものと考えられた。一方、菊池渓谷ではソウシチョウは1990年代には低密度だったが、2010年代には大きく増加して、在来種のうちウグイスは減少していた。なお、調査した2012年の時点で菊池渓谷にはシカの生息痕はみられなかった。これらの結果から、過去20年間で地域によってソウシチョウが増加した場所とそうでない場所とがあり、またシカの影響が顕著な場所とそうでない場所とで、ソウシチョウの影響の表れ方が異なるものと考えられた。