| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-051 (Poster presentation)

都市モザイク景観におけるアライグマ(Procyon lotor)の環境利用

*岩下明生,中村基希,宇野翔太郎,押田遼太郎,小川 博,安藤元一(東京農大 野生動物)

日本に野生化したアライグマは森林から都市にかけて幅広く分布している。本研究では住宅地と緑地が混在する都市モザイク景観においてアライグマがどのような環境利用を持っているか調べた。神奈川県鎌倉市の南西部の住宅地と緑地でアライグマの捕獲を行い、2010年8月-2014年1 月にかけてオス9頭、メス12頭についてラジオテレメトリーを行った。解析には測位地点数が30点以上あったオス6頭とメス6頭を用いた。行動圏(95%固定カーネル法)はオスで平均207.2±59.6 ha、メスで62.0±29.6haとなり、オスの方が有意に大きかった。コアエリア(50%固定カーネル法)においてもオスで46.8±12.9ha、メスで13.5±7.0となり、オスの方が有意に大きかった。行動圏の重複度はオス間で31%、メス間で49%、異性間で33%となった。いずれにおいても排他的な行動圏はみられず、特にメス間において行動圏の重複が高い傾向がみられた。夜間において本種は緑地と緑被率15%以上の住宅地を選択し、一般住宅地、水系を忌避していた。さらに詳細にみると林縁部を選択し、森林や住宅地の中心部を忌避していた。いずれの個体も休息場の45-90%は民家を利用しており、利用された民家の15-96%が緑地に隣接していた。特定の民家を複数の個体が同時に利用したり、入れ替わって利用したりすることもあった。以上のことから都市モザイク景観に野生化したアライグマは、1)緑地への強い依存性を持つこと、2)採食場や休息場として環境利用を変化させること、3)他個体同士で行動圏や休息場の一部を共有していることが明らかになった。これらの成果はアライグマの捕獲場所選定や捕獲檻の運用方法に活用できる。


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