| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-056 (Poster presentation)
滋賀県の彦根城中堀にはオニバスEuryale ferox(絶滅危惧Ⅱ類・彦根市指定文化財天然記念物)が自生しているが,2012年頃からほとんど見られなくなった.同所には,ハスなどを食害することで知られる外来種アカミミガメTrachemys scripta elegansが多数生息する.そこで,彦根城中堀のオニバス個体群に対するアカミミガメの影響を調査した.
2013年4月12日から同年12月9日にかけて,オニバスの自生地に生息しているアカミミガメの個体数推定および食性調査を実施した.また,飼養実験を行い,アカミミガメのオニバスへの選好性を検証した.オニバスの自生地では,捕食者排除実験を実施し,カメの侵入がない状態の40mmメッシュ処理区および10mmメッシュ処理区とその対照区を設け,それぞれの実験区におけるオニバスの生育の程度を比較検討した.反復は3とした。
オニバスの自生地におけるアカミミガメの推定個体数は108個体で,ヨシや付着藻類を主に摂食していた.また,飼育下におけるアカミミガメの餌選好性はオニバスとハスが同程度であり,ヨシはそれらと比べて著しく低かった.現在,自生地からオニバスとハスはほぼ消滅しており,アカミミガメはオニバスより選好性の低いヨシを主に摂食していたことから,オニバスがアカミミガメに重度に食害された可能性がある.捕食者排除実験では,オニバスの導入時期,10mmメッシュ処理,およびそれらの交互作用がオニバスの生存率との間に有意な関連性を示した(ロジスティック回帰分析,P<0.05).以上の結果から,10mmメッシュの保護柵を設け,生物の侵入を防止することにより,オニバス苗の生存率を高くすることができると考えられる.