| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-061 (Poster presentation)
近年、小笠原諸島では観光客の増加や物資の移動等に伴い、外来生物侵入リスクが高まっているが、防除対策は徹底されているとは言えない。効果的な防除対策を行うためには、侵入経路ごとのリスクを明らかにする必要があるが、現在それらは十分に把握されていない。そこで著者らは、母島への侵入経路の一つである人の移動について、特に植物の侵入経路及び侵入量を明らかにするための調査を行った。
調査方法は、定期船の乗下船口に設置した泥落としマットに付着した泥に含まれる植物の種子を採取し、専門機関で同定してもらう方法により行った。調査場所は、母島沖港のははじま丸下船口と東京港竹芝桟橋のおがさわら丸乗船口とし、母島沖港においては、2011年12月から2012年12月までに208回、東京港竹芝桟橋においては、2012年2月から3月に5回、種子採取を実施した。
その結果、母島沖港では9科439個の種子が検出され、コミカンソウ属、シバ、シマヒゲシバの順で多かった。最も多かったコミカンソウ属は全体の68%を占めており、オガサワラコミカンソウと推測された。なお、検出されたすべての植物が、父島の港およびその周辺で確認され、山域のみに生育する種は見られなかった。季節や乗船客数による検出数の差は認められなかった。また、東京港竹芝桟橋では6科119個の種子が検出され、アキメヒシバ、メヒシバ等のイネ科植物が82%を占めるなど、母島とは大きく異なる種構成であった。
以上の調査結果より、人の移動に伴い母島に侵入する外来植物の種子は、父島の集落や港周辺で付着した可能性が高い。そのため、現在行われている森林部での外来生物対策に加え、集落や港周辺での効果的な対策が必要であると思われる。また、現在明らかになっていない、物資の輸送に伴う侵入についても今後調査を行い、対策を検討する必要がある。