| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-064 (Poster presentation)
侵略的外来種の侵入は淡水生態系の生物多様性を低下させる複合的な要因の1つである。淡水生態系の生物多様性を保全するためには、侵略的外来種の生物間相互作用を考慮した計画的かつ早期の排除が重要となる。しかし、侵略的外来種が生物多様性の高い地域へ侵入した初期段階における排除が水生生物に及ぼす効果についての研究例はほとんど無い。
本研究では、生物多様性の高いため池群に侵入したウシガエルの排除が水生生物に及ぼす効果について明らかにすることを目的とした。
岩手県南部の丘陵地に位置する久保川流域には、生物多様性の高いため池が数百以上残存するが、2005年頃からオオクチバス、アメリカザリガニ、ウシガエルが侵入し、中でもウシガエルは急速に分布を拡大している。ウシガエルは水生生物に多大な影響を及ぼすことから、2009年に設立された「久保川イーハトーブ自然再生協議会」による自然再生事業で、ため池におけるウシガエルの排除が2010年より本格的に開始された。主に生物多様性の高い110の池でもんどり型トラップ550個を設置し、毎週の回収を実施した。2010~13年にトラップによる捕獲および、すくい取りによる水生生物相調査を実施した。その結果、ウシガエルの減少とともに、ヌカエビも徐々に減少した。一方、ヤゴの増加が見られ、小型の水生昆虫を中心とした水生生物種数も増加した。ゲンゴロウやガムシなどの中~大型の水生昆虫も回復が見られた。一方、在来のカエル類では、回復傾向は緩やかであった。
以上の結果から、生物多様性の高いため池群における早期のウシガエル排除は、在来の様々な分類群の水生生物の回復をもたらす可能性が示唆された。