| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-066 (Poster presentation)

マルハナバチ3種の採餌場所利用パターンの比較

*西川洋子,島村崇志(北海道環境研)

石狩浜海岸草原には、在来種のエゾオオマルハナバチとハイイロマルハナバチが生息するが、近年セイヨウオオマルハナバチが侵入し、その観察数は増加傾向にある。これら3種のマルハナバチは、活動シーズン中の採餌場所として海岸草原とその周辺の異なるタイプの植生もあわせて利用していることが考えられる。海岸草原と、その周辺に位置する伐採跡地、耕作放棄地の3カ所でマルハナバチ3種の利用植物と訪花頻度のモニタリングを行い、各マルハナバチの採餌パターンを明らかのすることによって、セイヨウオオマルハナバチと在来マルハナバチとの間に花資源をめぐる競争が起きている可能性を検討した。3種のマルハナバチは、いずれも3カ所の植生を利用していたが、利用パターンには違いがみられた。エゾオオマルハナバチは海岸草原を主に利用していた。ハイイロマルハナバチとセイヨウオオマルハナバチは海岸草原よりも他の植生を頻繁に利用する傾向を示した。ハイイロマルハナバチはマメ科植物をよく利用しており、マメ科植物の開花量が多い伐採跡地と耕作放棄地で主に採餌を行っていた。ヒロハクサフジが開花する時期は、海岸草原でも観察された。セイヨウオオマルハナバチは、ハイイロマルハナバチより活動開始時期が早く、他の植生より開花シーズンが早く始まる海岸草原で訪花が観察された後、耕作放棄地で観察され、7月中旬以降は主に伐採跡地で観察された。海岸草原ではセイヨウオオマルハナバチの訪花パターンはエゾオオマルハナバチと似た傾向を示したが、他の植生ではマメ科植物も高頻度に利用していた。マルハナバチの植生の利用パターンは、植物の嗜好の違いに応じて種間で異なる。これは、形態的特徴の違いによると考えられるが、口吻長が在来マルハナバチ2種の中間に位置するセイヨウオオマルハナバチは、より広範な植物を利用しており、在来種との花資源をめぐる競争は起きにくいと考えられる。


日本生態学会