| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-072 (Poster presentation)

琵琶湖南湖における沈水植物と底生動物の分布:2011年~2013年の結果から

*井上栄壮,永田貴丸,石川可奈子(琵琶湖環境科学研究セ),西野麻知子(びわこ成蹊スポーツ大)

琵琶湖南湖では、1994年に観測史上最低水位を記録して以降、沈水植物(水草)が大量に繁茂するようになった。近年、水草による船舶の航行障害、漁業障害等が問題となっており、滋賀県等による水草除去事業が進められている。演者らは、南湖における水草繁茂と底生動物の分布現況を把握することを目的として、2011年から9定点でモニタリングを実施している。昨年大会では、主に植物プランクトンの増加による透明度の低下により、2012年に水草が急激に減少したこと等を報告した。本発表では2013年の結果を加え、前年以降の変化について報告する。

2013年5月の水草(糸状藻類を含む)の9定点合計乾重量(相対値)は、2012年5月の39.0%まで減少した。しかし、2013年8月は、水草が減少した2012年8月の2.8倍に増加し、水草が多かった2011年8月の71.4%まで回復した。乾重量に占める割合は、2011年~2012年はセンニンモが44.3~70.8%を占めたが、2013年5月は糸状藻類が65.9%、8月はクロモが47.1%、マツモが24.9%となり、センニンモは14.2~14.4%まで減少した。

底生動物の生息密度は、2011年~2013年を通じてミミズ類が60.6~73.4%を占め、次いでユスリカ類が11.9~27.6%であった。また、3年間とも生息密度は5月に高く8月に低かったが、2013年8月は2011年および2012年8月の中間程度であった。8月の水草重量と底生動物の生息密度との間に負の相関が認められたことから、ある程度、水草除去によって夏季の底生動物相が回復する可能性がある。しかし、現状ではミミズ類以外の生息密度は低いため、底生動物の生産性・多様性を高めるためには、水草管理とともに湖底環境の根本的な改善が必要と考えられる。


日本生態学会