| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-074 (Poster presentation)
ミツバチへの影響を懸念し,昨年,EUが2年間の使用停止を決定したネオニコチノイド系殺虫剤であるクロチアニジン,イミダクロプリド,およびチアメトキサムの3剤,及びフェニルピラゾール系殺虫剤であるフィプロニルは,我が国でも水稲の育苗箱処理剤として多用されている.また,これらの薬剤の使用開始時期との関係から,我が国における近年のアキアカネ減少の原因である可能性も指摘もされている.我が国では,現在,農薬による生態影響評価はOECDテストガイドラインに基づく,魚類・ミジンコ・藻類を用いた急性毒性試験の一元的なデータのみに基づき,生物の地域固有性や季節性,多様性は考慮されていない.そこで我々は,地域別の生物多様性への影響評価手法の開発を目指して,物理環境調査,残留農薬濃度分析,および生物調査それぞれの結果を総合的に解析するシステムとして水田式メソコズム試験の検討を進めており,特に近年多用されている箱苗処理剤を用いて水田生物群集に対する影響評価を実施している.イミダクロプリド,クロチアニジン,およびフィプロニルを比較した場合,イミダクロプリドおよびクロチアニジン処理区では動物プランクトン相に影響が見られ、フィプロニル処理区ではトンボ類など昆虫相に対し,強い影響が検出された.また,フィプロニルは土壌吸着性が高く,複数年にわたる連続使用により土壌残留濃度が高まり,生態影響も強まるものと考えられた.