| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-081 (Poster presentation)
火入れや採草によって維持されてきた半自然草原には,多様な植物・昆虫が生育・生息
している.しかしながら近年,ライフスタイルの変化にともなう草原の利用価値の低下に
よって,草原の利用放棄や管理の簡略化(管理頻度の変化)が進行している.伝統的な管理
は多様性を維持する一方で,管理形態の変化は生息地消失のみならず,草原の質を変化さ
せることで生物多様性の減少を引き起こすとされているが,多様性の減少プロセスおよび
メカニズムについては十分に解明されていない.
本研究は、木曽馬の産地である長野県開田高原の半自然草原をを調査地とし、管理の
放棄や簡略化に伴う環境の変化が引き起こす植物多様性の減少を通じ,それを利用する
生物群集の多様性を減少させているという仮説を検証することを目的とした.伝統的
(火入れと採草を二年に一度実施)、毎年火入れのみ,毎年草刈りのみ,放棄の4管理形
態ごとに,植物,チョウ,バッタ,ハムシ,クモ,アリの6群集の多様性変化のパター
ンおよびその要因を検証した.
結果から,植物,チョウ,バッタは伝統的管理の多様性が一番高かった.これは植物を
資源としている種群が植物の多様性に維持されていることが考えられた.一方でハムシは
毎年火入れを行う土地で最も多様性が高かった.本結果は,資源である植物の量(バイオ
マス)が関係している可能性がある.さらにクモは草刈のみの土地利用で最も多様性が高
かった.クモの移動能力は,他の種群に比べ低く,火入れが負の効果になっている可能性
が考えられた.これらの結果から,全ての種群の多様性を包括することのできる管理とは
何かについて議論したい.