| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-088 (Poster presentation)
都市における公園や緑地は、従来の機能に加え生物多様性の保全や生きものとふれあう場として、地域の生態系を構成する重要な要素としての役割が求められるようになってきており、住宅地が大半を占める市街地では、住宅敷地や小規模な緑の機能も注目されている。本研究では、植生調査を中心として都市の小さな緑地における種多様性の現状を明らかにするとともに、市民が身近な緑地の種多様性や生態系サービスに対してどのような意識をもって関わっているかを明らかにし、生物多様性時代の都市の緑地における管理・活動の一助とすることを目的とした。
調査対象地は、様々なタイプの都市緑地2ヶ所と市民緑地7ヶ所とし、環境調査(周辺環境、緑地内の緑被率・樹木地率・緑視率・人工物率・樹冠被覆率)、植生調査(フロラ調査・相観植生調査)、利用者アンケート調査を行った。
植生調査では、調査対象地において計554種、最も多い調査地で333種、少ない調査地で111種確認した。種数と面積の関係には相関がみられ、特に草本の種数と面積に強い相関が見られた(p<0.05)。アンケート調査では、回答者の多くが自然や環境保全に対して関心をもっているが、実際に緑地に関わる活動をしたことがある人は少なく、参加したいという気持ちはあっても、行ける機会がないことや、どのような活動があるかわからないことから、参加していない人が多いことが分かった。また、市民緑地のような小さい緑地ほど、存在を知られていないため利用する人が少なかった。利用者の種多様性ならびに生態系サービスの評価と、環境要因、植物の出現種数との関係を調べた結果では、生態系サービスのうち供給サービスと調整サービスに関しては、斜面地であることが利用者の評価に影響していた。また、緑地内の植物の出現種数よりも視覚的な要因である樹冠被覆率が利用者の評価に影響を与えていることが明らかとなった。