| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-089 (Poster presentation)
はじめに
地球温暖化は生態系に大きな影響を与える。本研究では、日本の生物に対する温暖化の影響を総括し、今後の研究への課題を提案することを目的とした。
手法
IPCC第4次評価報告書(2007)以降の査読論文を対象とし、文献レビューを行った。(Ogawa-Onishi & Berry (2013)に加え、2013年以降の論文を収集し、考察を一新した。)
結果
1960年代以降、全国平均では、春の開花、発芽は早くなり、秋の紅葉、落葉は遅くなったが、地域的には逆の現象も観測され、特に動物では、種や地域による差が大きい。春の生物季節は、将来も早期化傾向が続くという予測が多いが、冬季の気温上昇による開花の遅延も予測されている。
生物の分布は、昆虫類やサンゴ類で年1.9-14kmの速度で北進が観測された。温暖化シナリオ下では、2100年までに、ブナや亜高山針葉樹の潜在分布域が70%以上減少すると予測されている。
考察
生物季節の変化は20種以上の動植物で観測され、一部の動物以外、温暖化が原因と分析されている。一方、将来予測の研究は数少なく、特に植物の秋の生物季節と、動物の生物季節の将来予測が今後の課題と言える。
生物分布の変化は、観測と予測のギャップが明らかになった。動物は分布の北進が観測されているが、予測研究はない。植物は、分布変化は観測されていないが、潜在分布域の大幅な変化が予測されている。従って、温度変化に敏感な種や保全優先種は、分布の北限や南限におけるモニタリングが重要である。また、潜在分布域の変化から実際の分布変化に至る過程をモデル化し、より現実的な影響評価をすることが課題としてあげられる。
参考文献
Ogawa-Onishi & Berry, 2013. Ecological impacts of climate change in Japan, biol cons 157.