| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-090 (Poster presentation)

日本産樹木機能特性の地理的及び系統的パターン解析

*サイハンナ,村上正志 (千葉大・理)

植食者に対する防御機構として、葉の硬さや棘などの物理的防御と、タンニンやアルカロイドなどの化学的防御が広く知られている。それぞれの葉の形質は、生物的、あるいは非生物的な何らかの環境要因に対する適応であると考えられる。本研究では、広域での調査のため、葉の寿命を計測することはできなかったが、物理的防御に関わる形質として、葉面積、比葉面積、厚さ、硬さ、乾物含有率を、化学的防御に関わる形質として縮合タンニン量、総フェノール量を測定した。 これらの形質は、地理的、系統的な傾度に沿って、変化すると考えられる。この差異を説明するメカニズムとして、熱帯の常緑森林では、非生物的な環境変化の影響をあまり受けないために、冬期間に低温の影響を受ける温帯に比べ、植食性昆虫群集のバイオマスがより高く、葉の消費率も高いとしている。熱帯の食害ストレスが温帯と比較して高いと仮定すると、熱帯の植物が温帯より強い食害防御を進化することが予想される。最近の研究では、計測された56の形質のうち、わずか9つの形質特性が低緯度高防御仮説からの予測に適合したことが分かっている。また、系統関係は葉の特性に影響すると考えられる。

本研究では、植物の葉の機能特性を網羅的に分析し、これらの特性に影響する、地理的および進化的要因の探索を試みた。4つの目的で解析を行う。1.形質間の相関、2.機能群と葉の形質の相関性、3.分布と葉の形質の間の関係、4.系統と葉の形質の相関性である。まず、すべてのサンプルの特性を測定し特性間の相関関係を比較し、さらに、データを針葉樹、常緑広葉樹、落葉広葉樹3つのグループに分け、各葉の形質の3つの機能群での相関関係を検討した。日本樹種の緯度分布を整理し、分布の端と葉の形質の相関関係を検討しました。本研究で取り扱った樹種の系統関係を分析し、系統距離と形質の距離の相関を検討しました。


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