| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-091 (Poster presentation)
公園などの都市緑地を、生物多様性に十分に配慮した方法で管理することは、生物の保全の観点からも、市民と自然のふれあいの促進の観点からも重要である。本研究の目的は、市民にとっても親しみやすいチョウが集まるような緑地にするために配慮するべき要因を明らかにすることである。チョウ成虫の一般的な餌は、花蜜と樹液であり、チョウ種ごとに選好性が決まっている。そこで、都市緑地において(1)森林性のチョウ種が好む樹液を分泌する樹種が里山的に管理されている雑木林区域、(2)常に供給され、大きな蜜源となっていると考えられる園芸植物の植栽が、各緑地のチョウ個体群に与える影響を調べた。
2012年秋から2013年夏の計3回にわたり、狭山丘陵から東京湾にかけての全42の緑地で現地調査を行った。各緑地内をなるべく満遍なく調査できるように設定したルートで歩き、観察した成虫のチョウ種と個体数を記録した結果、のべ43種3516個体が観察された。里山区域のある緑地はサイズによらず、総種数、調査時間当たりの個体数、および種多様度が有意に高い傾向にあった。里山区域の効果は、樹液だけではなく、生息環境の提供によって与えられている可能性も考えられる。一方、園芸植物の植栽地(花壇、花畑など)の有無が、花蜜食チョウの種数、個体数、多様度に影響を与えているかを調べたところ、面積が 2ha 以下の小緑地では有意な差は見られなかったが、7ha以上の大緑地では、植栽がある場合に有意に種数が少なく、種多様度も低かった。しかし、園芸植物の植栽が花蜜食チョウに負の影響を与えるとは考えにくい。園芸植物が植栽されている緑地には、花蜜食チョウにとって好ましくない他の環境要因(例えば、人工物が多いなど)が付随している可能性が考えられる。