| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-092 (Poster presentation)

ガ類の食性分類群における環境応答

*東郷有城(龍谷・院・理工),小澤元生(龍谷・院・理工),太田真人(龍谷・院・理工),満尾世志人(龍谷・理工),遊磨正秀(龍谷・理工)

かつての里山は林部と草原のモザイク分布が広がっていたが、人の手を離れ遷移が進む現在の里山ではそのような景観は見ることができず、林床の暗化などにより生物多様性の低下が叫ばれている。そのため、森林環境と植食者の関係を把握することは森林生態系の保全において非常に重要である。そこで本研究では一次消費者であるガ類、特に木本食ガ類に着目し、森林環境の違いが食性の異なるこれらの群集構造に及ぼす影響について検討した。

本研究は滋賀県大津市の森林において計12の調査地点を設け、同一の方法でライトトラップ調査及び植生調査を行った。植生調査では樹高1.3m以上の樹木を対象とし、種数、個体数、胸高直径を測定した。また、木本食ガ類は餌資源として利用できるとされている樹木の種数毎に、単食性、狭食性、広食性の3グループに分類した。木本食ガ類の食性タイプ別種数及び個体数を目的変数、上記の環境要因を説明変数としてGLMを用いて解析を行った。

その結果、単食性ガ類の個体数と樹木種数及びDBH合計に正の関連、狭食性ガ類の個体数と樹木種数及びDBH合計に正の関連、広食性ガ類の種数とDBH合計に正の関連、広食性ガ類の個体数と樹木個体数及びDBH合計に正の関連、樹木種数と負の関連がそれぞれ得られた。その他の食性タイプ別ガ類と環境要因には関連が認められなかった。

これらのことから、木本食ガ類群集は幼虫期に餌資源として利用できる樹木の量と関連があることが分かった。さらに、樹木種数は単食性ガ類の個体数と関連が見られたのみであり、複数の樹木を餌として利用できる分類群は樹木の多様性ではなく樹木の量により大きな影響を受けることが示唆された。よって、森林における生物多様性を保全するには、群集により要求する環境の違いについて十分に理解する必要があると考えられる。


日本生態学会