| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PC2-004 (Poster presentation)
落葉広葉樹林 (コナラ林) のリター呼吸は、土壌呼吸の約40%を占め (増田、未発表)、森林の炭素循環の中でも重要な放出源である。しかしリター呼吸のみを測定している研究例は少なく、野外測定の手法が確立していない。本研究では、異なる3手法の測定の比較から最適な測定法を確立すると共に、従属栄養生物呼吸に対するリター呼吸の寄与率や環境要因との関連を明らかにした。
調査は長野県軽井沢町の冷温帯コナラ林において、2013年5月から11月まで行った。リター呼吸の測定には、プレート上で呼吸量を測定するプレート上測定法 (P法) 、全土壌呼吸量からリターを除いた土壌呼吸量を差し引いて求める土壌上測定法 (S法)、土壌のA層の一部を真砂土に入れ替えS法と同様の方法で算出する真砂土上測定法 (D法) の3種類とした。
測定の結果、P法とD法で測定されたリター呼吸は8月に最大、11月に最少となる季節変化を示したが、S法では明瞭な季節変化は認められず、また常にリター呼吸が負の値を示した。加えてP法はプレート上でのリター呼吸の測定のため、D法よりもリター温度が最大3℃高くなり、呼吸量が過大評価されていた。
したがって、リター呼吸の測定にはD法が最も適切な手法であると考えられる。またD法により算出された年間のリター呼吸量の積算値は208.5 g CO2 m-2 yr-¹で、従属栄養生物呼吸量 (1377.5 g CO2 m-2 yr-¹ ) に対する寄与率を算出すると、年間平均で約10%を占めていた。この値は、室内実験で報告された値よりも低い値を示している。さらに環境要因に対するリター呼吸の応答性を解析した結果、リター呼吸は温度に対して強い依存性を示したが、含水比に関しては相関が見られなかった。