| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PC2-005 (Poster presentation)
分解が遅い粗大枯死材は森林内に長期間滞留するため、森林生態系における炭素の貯蓄・放出源として重要であるが、特に熱帯雨林において材の分解特性に関する知見が不足している。さらに材の分解研究では主に幹が対象であり、野外調査の困難さから太根の分解特性に関する研究はほとんど見られない。そこで本研究では、マレーシアのランビルヒルズ国立公園において、枯死年の異なる太根を用いた分解実験と化学分析を行い、熱帯樹木の太根の分解速度とその決定要因、および枯死した太根の材特性の経年変化を明らかにすることを目的とした。
全11科16属45種86個体の枯死木から採取した太根サンプルを、調査地の林内に埋め、2012年10月から2013年の8月まで分解実験を行った。化学分析では枯死サンプルと生木サンプルを用いてリグニン濃度、炭素濃度、窒素濃度を測定した。分解実験後、指数関数分解モデルを応用し、相対密度と生重の変化率を用いて求めた分解速度定数は0.0638〜0.471/年となり、熱帯樹木の太根は枯死後10年以内に半減することが示唆された。また、リグニン濃度、炭素濃度と窒素濃度がkに負の影響を与えていたことから、枯死に至るまでに材内部で分解が進み、分解初期に生じる窒素の不動化がさらに分解を促進させている可能性が示唆された。熱帯地域では他の気候帯より明らかに太根の材の分解が活発であり、土壌動物の影響が大きい可能性も考えられる。本研究で用いた手法は、短期的かつ効率的に分解特性を求められる有用な方法であり、正確な材の体積の計測や様々な分解モデルの利用によって、より精度の高い分解特性を明らかにすることができるだろう。