森林生態系の炭素動態を理解することは、地球規模での陸上生態系の炭素収支を算出する上で重要であると同時に、森林生態系の構造や機能を理解する際に必須である。そのためには、様々な樹種や環境下の森林において炭素動態を測定・比較することが重要となる。しかし、同一環境下で異なる樹種の森林を比較した研究例は少ない。そこで本研究では、近接したカラマツ林・コナラ林・アカマツ林においてバイオメトリック法を用いて炭素動態を測定し比較した。

各3林分において土壌呼吸(SR)・従属栄養生物呼吸(HR)・リターフォール量(LF)・樹木の成長量(⊿B)を測定し、LFと⊿Bの和から生態系純一次生産量(NPP)を、NPPとHRの差から生態系純生産量(NEP)を推定した。

HRはカラマツ林・コナラ林・アカマツ林でそれぞれ2.2・3.3・2.6 (tC yr^-1 ha^-1)となった。カラマツ林では年間を通じてHRが低い傾向を示した。一方で、コナラ林では高い値を示した。LFはカラマツ林・コナラ林・アカマツ林でそれぞれ1.8・2.7・2.0 (tC yr^-1 ha^-1)となりコナラ林で多く、⊿Bはそれぞれ1.8・3.1・5.6 (tC yr^-1 ha^-1)となりアカマツ林が高い値を示した。これらの値に基づき NEPを推定すると、カラマツ林・コナラ林・アカマツ林でそれぞれ1.4・2.5・5.0 (tC yr^-1 ha^-1)となった。カラマツ林は他の2林分に比べLF・⊿B共に低いためNEPも低い値となった。一方、アカマツ林は高いNEPを示し、これには高い⊿Bが貢献した。以上の結果から、同一環境下においても、優占種の異なる森林では炭素動態が大きく異なっていることがわかった。