| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PC2-009 (Poster presentation)

森林管理とエネルギー利用が炭素循環に与える影響の解明~現代における持続可能な里山管理とは?~

*松下華代,友常満利(早稲田大・院・先進理工),坂巻義章(早稲田大・理工総研),小泉博(早稲田大・教育)

日本では、燃料や肥料を得るために下草刈りや落ち葉搔きといった管理が行われる二次林が多く残されてきた。これは里山と呼ばれ、生物多様性の面から管理の継続が望まれている。一方、この様な里山の管理が炭素循環に与える影響については十分な研究がなされていない。本研究では、下草刈りのみを行った(UH)区、下草刈りと落ち葉搔きを行った(LR)区を設置し、対照(C)区と比較することで里山の管理が炭素循環に与える影響について調査した。また、管理による収穫物をバイオエネルギーとして利用した場合の里山の炭素循環についても検討した。

管理の結果、植物による炭素固定量は全ての区において6~7 tC ha-1 yr-1と大きく変化しなかったのに対し、微生物による炭素分解量はC区の5.1からUH区で3.7、LR区で3.8 tC ha-1 yr-1と減少した。炭素固定量は林冠の樹木の光合成量によるところが大きいため変化が少ないのに対し、土壌からの炭素放出量は下草等の細根の減少や落ち葉の除去によって影響を受け減少したと考えられる。一方、バイオエネルギー利用は化石燃料による炭素放出をUH区で0.7、LR区で3.5 tC ha-1 yr-1減少させるが、同時に有機物の燃焼によりUH区で1.3、LR区で7.0 tC ha-1 yr-1の放出も引き起こすと推察された。以上のことから、森林管理は生態系純生産量(NEP)を増大させるが、バイオエネルギー利用は増大と減少の両方の効果をもたらすことが示された。森林の炭素循環は正負の対立する効果のバランスの上でなりたっており、管理開始1年目の結果では、落ち葉搔きをしない下草刈りのみの管理が最も高いNEPを示した。以降も調査を継続し、持続可能な里山の管理周期・強度について提言を行いたい。


日本生態学会